言葉と行動の紐付け

仁之介の得意なことって何? と聞かれたら、今日のタイトルを答える。

そう思うようになった出来事は、忘れもしないあの頃……
雛換羽が終わるか終わらないかの辺りから、力いっぱい私達の手を噛むようになった仁之介。
機嫌が悪い日があるのは当然なんだけど、だからといって噛み続けるのはどうなんだろうとあれこれ調べ始めた。

1つ目、噛んだらケージに帰す。
これは犬と暮らす知人から、悪戯する度にケージに入れていたらケージ嫌いになってしまったと聞いたことがあったので即除外。
1日の大半を過ごす自分の家を嫌いになって欲しくなかった。

2つ目、無視。
これはブリーダーさんのブログや本で知ったことで、噛んだら駄目だと伝えて手から下ろし、少しの間無視する、というもの。
伝える言葉は、家の全員で同じにする。
これならやれそうだとボスと話し合い、「いけない」に決定してやってみることになった。

仁之介、手を噛む
噛まれた人間、仁之介の目を見て「いけない」と言い、仁之介を手から下ろす
少しの間、仁之介と目を合わせず無視

最初のうちはすぐ手に戻って来て、「なんだよこいつ、もっと噛んでやれ!」の繰り返しで、放鳥時間のほとんどを「いけない」と言っていた。
けど何か思うところがあったんだろう、そのうち噛むと肩にやって来て、頬や耳をハミハミするようになった。


ナイフみたいに尖っていた頃の仁之介。
(食べているのはインコの発芽玄米煎餅)

「いけない」作戦で少しずつ変化はしていたけど、それでも全く噛まない日は無かった、そんなある日……

固いツンツンがあるけどカキカキして欲しい時期、場所が悪くて「ピッ!」っと痛い鳴き声をあげた仁之介。
私が思わず「いけないだね、ごめんね」と言うと、じーっと私の顔を見つめる、ということがあった。
あれ? これはもしやと思い、その後も痛いツンツンを触ってしまった時は、「いけない」とだけ言うようにしてみた。
勿論、わざと痛みを与えることは出来ないので、何度も機会があったわけではないのだが、数回で変化は起きた。
噛んで「いけない」と言われた後、その手に謝るかのようにハミハミするようになり、噛まれる回数がぐっと減った。

この辺りで「いけない」は『痛み』だと知ったんだと思う。
その後は噛むといえば発情期のパワー溢れる時期だけになり、最後に噛まれたのはいつだったか思い出せないけど、そのうち全く噛まなくなった。

そして今……
仁之介は放鳥中、自分だけで遊びたい時間がある。
その時私がカメラ片手について行くと、床をくちばしでコンと突いて「いけない」と伝えてくる。
いつの間にか嫌なことや駄目なことをそうやって意思表示してくれるようになった。
「いけない」は『不快』なこと、仁之介の中でそう変化していったのかな?

上の話だけで長くなってしまった……
他にもいろいろあるけどもうひとつ。

仁之介がボスと私のことを、「こいつらは俺の仲間なんだ」と意識するようになった頃、ケージのあるリビングを出るだけで呼び鳴きするようになった。
すぐに戻るのに毎回全力で鳴くのは疲れるだろうと思い、席を立つ時はケージに近付いて声をかけるようにしてみた。

「洗濯干してくるよ、ちょっと待ってて」
「台所に行ってくるよ、ちょっと待ってて」

これがしばらく経つと数回呼び鳴きするだけになり、やがてちっとも鳴かなくなった。
今では「○○してくるよ」と伝えると「ちょと待ててぃっ!」と仁之介が返してくれる。
仁之介の中では、この「ちょっと待ってて」が、やがて戻って来るという認識なんだと思う。
因みに急いでいて言い忘れたりすると、「ひと言言っていけ!」とばかりに怒ってる鳴きをする。


大人の階段を上った、現在の仁之介。

ボスと私が話していると間に立ってピチュピチュと入ってくるし、朝は朝で「ハイ!」と言う仁之介の後に私達も「ハイ!」と続かなくてはならないし、仁之介は仲間と話し合ったり鳴き合ったりするのが好きなんだろう。
なので私達も、分かって欲しいことは声をかけて伝えていけば、仁之介も考えて応えようとしてくれるのだろうな、と、勝手ながら思う。
鳥って仲間のことを本当によく観察してるしなー。